皆さんはケアーンテリアという犬種をご存知でしょうか。
1939年に上映された映画『オズの魔法使い』で、主人公ドロシーの愛犬“トト”として出演した犬と言えば、あの犬かと思い出す方もいらっしゃるでしょうか。
ケアーンテリアはヨーロッパ地域ではよく飼育されている犬種ですが、わが日本ではまだまだ馴染がない状況です。
今回は、このケアーンテリアの性格と特徴、価格やブリーダー、注意点や気になる病気について詳しくご説明したいと思います。
Contents!
ケアーンテリアってどんな犬?
ケアーンテリアはイギリス・スコットランド原産の犬です。
スコットランド原産のテリアは何種か存在しますが、それらはスコティッシュテリアという1種のテリアをもとに作り出されました。
1873年頃、スコティッシュテリアはダンディ・ディモントンテリアとスカイテリアという2種に分かれました。
そしてその15年後、今度はスカイテリアがスカイテリアとハードヘアード・テリアという2種に分かれ、その後ハードヘアード・テリアから生まれたのが、ケアーンテリアと黒いスコッチテリアです。
ケアーンテリアと命名されたのは1912年で、彼らはウサギやキツネなどの小動物を捕らえる猟犬として活躍していました。
名前の“ケアーン”とはスコットランドの言葉で“石積み”を意味し、当時石の隙間に入り込んで小動物を追い込んでいたことから名付けられました。
因みに、ケアーンテリアは、ベースとなったスコティッシュテリアに最も風貌が似ていると言われています。
農村部で猟犬として飼育されていたケアーンテリアは、次第に家庭犬やショードッグとしても人気が出るようになります。
大体の犬種はショードッグ用としてどんどん改良されるようになりますが、ケアーンテリアに関しては愛好家が祖先犬に近い姿を望んだため、ほとんど手が加えられずに繁殖され続けました。
そのため、ケアーンテリアは今でも外見を保ったままテリア気質も保持し、多くの愛好家たちから親しまれています。
体の特徴
それでは、ケアーンテリアの特徴についてみていきましょう。
ケアーンテリアはオスメスともに体高が23~31cm程度、体重が6~8kg程度であるため小型犬に分類されています。
大きな差はありませんが、基本的にオスのほうがメスよりも大柄です。
体長が体高よりやや長く、四肢はテリア種の中では少し短めです。
猟犬ということもあり筋肉質な体つきで、がっしりとした力強い立ち姿です。
顔は幅広く、比較的丸顔でマズルは短めです。
耳は立ち耳、顔の周りに飾り毛があるのが特徴で、顔立ちはキツネに似ていると言われています。
被毛については柔らかく密生したアンダーコートと硬く粗いトップコートから成るダブルコートで、日々のお手入れが欠かせません。
毛色はクリームやレッド、ブラック、グレー、ブリンドルなど様々な色が存在しますが、ホワイトに関してはウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアに該当してしまうため認められていません。
ケアーンテリアは同じ毛色がないと言われるほど個体によって毛色が異なります。
そして、ブリンドルに関しては生涯を通して毛色が変わるという特徴があり、7回も変わることもあるようです。
寿命
ケアーンテリアの寿命については、12~15歳と言われています。
性格
次に、ケアーンテリアの性格についてご説明します。
ケアーンテリアはテリア気質が強い犬種で、陽気で明るく好奇心旺盛な性格をしています。
飼い主に対しての忠誠心は強いですが、頑固な一面もあります。
また、狩猟本能が強いため、何かを追いかけたり地面を掘り返したりすることがあります。
賢く物覚えは良いものの、頑固さゆえしつけはやや難しい犬種と言って良いでしょう。
他種の犬や子どもに対しては相性が悪いと攻撃的になったりするので、飼い主がコントロールできるように幼犬のうちからきちんとトレーニングしておく必要があります。
ただ、しつけさえしっかりと行えば飼い主や家族に対して非常に愛情深く接してくれるので、家庭犬として飼育しやすいでしょう。
もちろん、番犬としてもおすすめです。
ケアーンテリアの値段やブリーダーは?
ケアーンテリアは日本ではまだまだ登録数は少ないですが、もし飼育してみたいという方がいらっしゃいましたらブリーダーを探しましょう。
ペットショップで販売されることはほぼないと言って良いでしょう。
子犬の価格については、10~25万程度になるようです。
日本ではまだ珍しい犬種のためブリーダー自体が少ないかも知れませんが、購入する際には是非事前に犬舎見学することを忘れないでくださいね。
ケアーンテリアのブリーダー情報はこちら!⇒https://www.dogoo.com/cgi/wssn/wssn_sdg.cgi?category=241kean
飼育にかかる費用
では、ケアーンテリアを飼育していくにはどれくらいのお金がかかるでしょうか?
ざっくりとした目安例としては、
・ケージ、サークル...10,000~20,000円
・首輪、リード...3,000~5,000円
・トイレ用品...トレー3,000円+シート毎月6,000円
・滑り止めなどの床材...30,000~50,000円
・ケア用品(ブラシ、シャンプーなど)...5,000円
・トリミング代...1回6,000~10,000円
・餌、おやつ代...毎月8,000~15,000円
・狂犬病やフィラリアの予防接種など...毎年10,000~20,000円
といった費用がかかることが考えられます。
また、骨折などのケガや病気をしてしまった時や避妊手術を受ける際は、その時々で治療費もかかります。
長い目で見た費用面でも、よく考えたうえで飼うようにしましょうね。
しつけのポイント
まず、先ほども述べたとおり、ケアーンテリアは気が強い性格であるためしつけは少々大変かもしれません。
物覚えはいいもののすんなり飼い主の指示に従わないこともありますので、しつけには時間がかかることを覚悟し根気強く行っていきましょう。
ただ、どんなに思い通りに行かなくても厳しく叱りつけては逆効果になってしまいます。
愛犬には毅然とした態度で落ち着いて接し、物事の善し悪しをしっかり教えていきましょう。
もししつけに自信がない場合は、ドッグトレーナーにお願いすることをお勧めします。
しつけに失敗するとその後ずっと苦労することになるので、そうならないためにもプロの手を借りましょう。
飼育する際の注意点
さて、ここでケアーンテリアの飼育をするにあたって、どのような点に気をつけるべきかをご紹介します。
運動量
まず、運動量については小型犬とはいえ猟犬なので、とても活発に動きます。
散歩は1日2回、30分以上行ってください。
ただ、散歩の際に小動物を見かけると追いかけてしまう可能性がありますので、リードは必ず手放さないよう気をつけてください。
散歩だけでは物足りないと思いますので、庭などでボール遊びなどして遊ばせると喜ぶでしょう。
ドッグランも良いですが、その際はくれぐれも他の犬とトラブルにならないように注意してください。
被毛のお手入れ
被毛のお手入れについては、換毛期以外は比較的抜け毛が少ない犬種なので週1~2回程度のブラッシングで問題ありません。
しかし、ケアーンテリアの場合はプラッキングが必要となります。
プラッキングとは、ハサミなどで毛を引き抜き、皮膚の新陳代謝を促すことで新しい毛を生えやすくすることです。
特に夏と冬の換毛期に必要とされ、プラッキングすることで皮膚病を防ぐことができます。
プラッキングは成犬期から始めると毛が抜けにくくなってしまうので、幼犬のうちから行い慣れさせることが大切です。
きちんと処理を施せば痛みを伴いませんが、初心者が行うとかえって皮膚状態を悪くする可能性がありますので、少しでも心配な場合は迷わずトリマーにお願いしましょう。
また、すでに皮膚疾患を抱えている個体の場合は行わないほうが賢明です。
ケアーンテリアがかかりやすい病気
それでは最後に、気になるケアーンテリアがかかりやすい病気についてご説明します。
皮膚病
ケアーンテリアは、遺伝的に皮膚病にかかりやすいと言われています。
そのためプラッキングのような日々のお手入れが欠かせないのです。
皮膚疾患は、アトピー性、アレルギー性、脂漏性、マラセチア、ウェスティ表皮形成異常(アルマジロ・ウェスティ症候群)などさまざまです。
脂漏症は、皮脂が過剰に分泌されてしまう病気です。
マラセチアは、正常な皮膚にもいる常在菌が何らかの理由で過剰に繁殖してしまう病気です。
ウェスティ表皮形成異常は、脂性の強い皮膚炎が悪化してアルマジロの背中みたいに皮膚が硬くなってしまうという病気です。
一度皮膚病を発症すると治療が長引くことが多いので、少しでも
・皮膚のべたつき、皮膚からの異臭、脱毛、かゆみ、大量の鱗屑やフケ、皮膚を過剰に掻き毟る
といった異常がみられたら、すぐに動物病院で診てもらうようにしてください。
特にアトピー性皮膚炎には要注意です。
1~3歳のうちに発症する例が多いので、飼育環境はできるだけ清潔を保ち、少しでも原因物質を排除できるよう配慮しましょう。
甲状腺機能低下症
中年期に差し掛かると甲状腺機能低下症を発症し、それが原因で脱毛が起きたりします。
甲状腺機能低下症とは、甲状腺機能が低下して、甲状腺ホルモンが正常に出なくなってしまう病気です。
具体的な症状として、
・左右対称の脱毛、尾の毛が抜ける、皮膚の乾燥、元気がない、体重の増加、寒さに弱くなる
などが見られたら、早めに病院を受診して確認してください。
甲状腺機能低下症の場合は残念ながら予防方法がないので、少しでも兆候が見られたらできるだけ早く動物病院を受診することが大切なのです。
眼の病気
ケアーンテリアはまた、遺伝的に眼病にもかかりやすい傾向があります。
具体的には、白内障や緑内障、進行性網膜萎縮症です。
いずれも放っておくと失明してしまう病気です。
特に緑内障は緊急性があるので、
・愛犬の目が赤くなったり、目全体が膨らんできた、目が濁って見える、物によくぶつかる
といった症状を発見した場合は、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
レッグ・ペルテス病
そして、慢性腎不全やレッグ・ペルテス病にも気をつける必要があります。
レッグ・ペルテス病とは大腿骨頭壊死症のことで、大腿骨頭への血流が不足することにより骨が変形したり崩壊したりして、最終的に骨折してしまうものです。
ケアーンテリアを含む小型犬で発症することが多いと言われ、その原因ははっきりわかっていませんが遺伝的なものではないかと考えられています。
徐々に悪化していく事もあるので、歩くときに足を引きずる、などの症状が見られたら、早めに病院へ行きましょう。
まとめ
ケアーンテリアはイギリス・スコットランド原産の小型犬で、体高27cm体重7kgほどの大きさになります。
陽気で好奇心旺盛な性格をしていますが、頑固でもあるため、しつけは少々大変かもしれません。
ケアーンテリアは日本ではあまり馴染がないとはいえ、2015年におけるジャパンケンネルクラブの登録数は132頭です。
テリア好きの方であれば、きっとご存知でしょうね。
ケアーンテリアはテリア気質が強いため、先ほども述べたとおりしつけはしっかりと行う必要があります。
少々手がかかる犬種と言えそうですが、小型犬ということを考えると日本の住宅事情でも問題なく飼育することができるでしょう。
興味のある方は是非一度検討してみてください。
また、ケアーンテリアを飼う際は、病気を防ぐためにも被毛のお手入れも忘れずに行っていかなければなりません。
いずれにしても、病気を早期発見するためにも定期検査をしっかり行うことをお勧めします。
できるだけ長生きさせてあげるためにも、愛犬の日々の観察を怠らないようにしましょう。