賢く従順なうえに運動能力にも優れているジャーマン・シェパード・ドッグ。
彼らはご存知の通り警察犬や災害救助犬として活躍しているだけでなく、映画やCMなどにもたびたび登場します。
職業犬としてのイメージが強いジャーマン・シェパード・ドッグですが、家庭犬としても世界的に人気の犬種です。
今回は、このジャーマン・シェパード・ドッグの性格や特徴、価格やブリーダー、気になる病気などについて詳しくご説明したいと思います。
Contents!
ジャーマン・シェパード・ドッグってどんな犬?
ジャーマン・シェパード・ドッグはドイツ原産の犬種です。
19世紀後半、優秀な作業犬や軍用犬を作り出す目的で、マックス・フォン・シュテファニッツ氏の手によって生み出されました。
ちょうど第一次世界大戦が勃発する少し前のことであり、歴史的には比較的新しい犬種と言えます。
作出に使われた犬はドイツ中部や南部の農家で古くから飼育されていた牧羊犬で、気質や毛質、サイズ等を考慮しながら交配が行われていきました。
作出に使われた牧羊犬も当時はジャーマン・シェパード・ドッグと呼ばれていましたが、新しいジャーマン・シェパード・ドッグが誕生した後は原種という意味の“オールド”という冠をつけ、“オールド・ジャーマン・シェパード・ドッグ”と呼ばれるようになりました。
さて、新しく生み出されたジャーマン・シェパード・ドッグは、最初に作り出した個体をスタンダードとして、厳重な管理下のもと、より優秀な個体を作り出すべく改良が進められることとなります。
こうして生み出されたジャーマン・シェパード・ドッグは、第一次世界大戦ではドイツ陸軍の軍用犬や番犬として働き、第二次世界大戦でも世界中の国々で軍用犬として活躍しました。
アドルフ・ヒトラーの飼い犬だったとも言われ、ナチス・ドイツ下でも軍用犬として働いていました。
ただ、そのイメージから戦後、ドイツおよびドイツの支配下にあった国々においてジャーマン・シェパード・ドッグの虐殺が行われたとも言われています。
しかし、すでに海外に渡っていたジャーマン・シェパード・ドッグたちは、警察犬や番犬など新しい分野で活躍するようになりました。
現在では彼らの優れた嗅覚や知能を利用し、警察犬のほか麻薬探知犬や災害救助犬、盲導犬としても利用され、もちろん家庭犬としても人気を博しています。
なお、日本に渡ってきたのは第二次世界大戦前で、その頃から軍用犬および警察犬として働いています。
体の特徴
それでは、ジャーマン・シェパード・ドッグの特徴についてみていきましょう。
ジャーマン・シェパード・ドッグは、体高がメスは55~60cm、オスは60~65cm程度、体重がメスは23~32kg、オスは30~40kg程度で大型犬に分類されています。
体高よりも体長がやや長く、横から見た際に腰からお尻にかけて下がって見えるのが特徴です。
筋肉質でスリムな体形をしており、俊敏で運動能力に優れています。
幼犬のうちは丸顔に垂れ耳ですが、成犬になると頭部は細く、オオカミのように凛々しい顔つきになり耳も立ち耳になります。
被毛については短毛のダブルコートが主流ですが、長毛の個体も存在します。
ただ、長毛種は劣性遺伝のため近年ではあまり見ることがありません。
短毛種はまっすぐで硬い上毛と柔らかく密生した下毛で覆われており、抜け毛が多いと言われています。
毛色は全身が黒色で覆われているオールブラックのほか、黒色地に茶系や黄色、グレーのタンが入っているもの、色が薄いウルフカラーのものなどさまざまです。
いずれも、鼻の周りにマスクと呼ばれる黒色の差し毛が入っていなければならないとされています。
近年では白色の個体も増えてきて、ホワイトシェパードとして確立されつつあるようです。
寿命
ジャーマン・シェパード・ドッグの寿命は、9~13歳と言われています。
性格
次に、ジャーマン・シェパード・ドッグの性格についてです。
彼らは知的で冷静、自分で考えることのできる洞察力があるにも関わらず忠誠心が強い犬種です。
勇敢で責任感が強いため、飼い主の指示にも辛抱強く従うことができます。
飼い主家族に対しても深い愛情を持って守ろうとしてくれます。
一方、警戒心が強い一面もあるため、知らない人間に対してはむやみに近づくことはありません。
忠誠心が強く周りの状況を冷静に見極める能力に優れていることから、警察犬や番犬、災害救助犬として利用されるようになったのです。
こうしてみると、家庭犬としても非常に飼育吸いやすいように見えますが、それはあくまでもきちんとしつけをした場合に限ります。
ジャーマン・シェパード・ドッグは、幼犬のうちからしっかりしつけができていればとても従順ですが、しつけを怠ってしまうと言うことを聞かない攻撃的な犬となってしまうことがあります。
一度そうなってしまうと、成犬からの再教育は難しいようです。
よって、ジャーマン・シェパード・ドッグは初心者の家庭には不向きと言えるでしょう。
ジャーマン・シェパード・ドッグの値段やブリーダーは?
ここまでご紹介したような点を理解したうえで、ジャーマン・シェパード・ドッグ飼育してみたいという場合は、専門のブリーダーから購入することをおすすめします。
その犬種についての理解があり、ある程度しつけられた子犬を購入するほうが安心だからです。
ブリーダーから購入する場合の子犬の価格は、10~20万円程度になります。
ペットショップの場合はもう少し高くなる可能性があります。
容姿や気質、血統次第では50万円近くすることもあるので、ブリーダーとよく相談のうえ購入してください。
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飼育にかかる費用
ジャーマン・シェパード・ドッグは大型犬なので、飼うための設備や餌代などの費用が他の犬に比べると高額になってしまいます。
具体的な費用例としては、
・ケージ...20,000~100,000円
・首輪、リード...3,000~5,000円
・トイレ用品...トレー10,000円+シート毎月6,000円
・滑り止めなどの床材...30,000~50,000円
・ケア用品(ブラシ、シャンプーなど)...5,000円
・トリミング代...1回6,000~10,000円
・餌、おやつ代...毎月15,000~30,000円
・狂犬病やフィラリアの予防接種など...毎年10,000~20,000円
といった費用がかかることが考えられます。
また、ケガや病気をしてしまった際も大型犬の医療費は高額になりがちですので、費用面でもよく考えたうえで飼うようにしてくださいね。
しつけのポイント
しつけについては、幼犬のうちから服従訓練を徹底し、いろいろな人間や犬と触れ合う機会を作って社会性を身につけさせましょう。
力が強い犬種のため、散歩の際なども飼い主がコントロールできる状態にしておく必要があります。
しっかりとしつけさえすれば、とても飼育しやすい犬となるでしょう。
ですが、前述したように幼犬の時期のしつけを怠ってしまうと、言うことを聞かない攻撃的な犬となってしまう可能性があり、成犬からの再教育も難しいようです。
幼犬のうちから毅然とした態度で接し、主従関係を明確にしておくことが大切です。
飼育する際の注意点
さて、ジャーマン・シェパード・ドッグを家庭で飼育する場合、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
基本は室内飼い
まず、ジャーマン・シェパード・ドッグを飼うなら室内飼いをおすすめします。
彼らは理解力や洞察力に優れているため、室内で家族とともに過ごしたほうが家族内での自分の役割を見つけるようになり、より信頼関係が深まるのです。
逆に屋外飼育で家族と触れ合う機会が少なかったり狭い場所で飼育したりすると、警戒心が強くなり攻撃的になってしまうので注意しましょう。
運動量
次に、ジャーマン・シェパード・ドッグは体力があるため、毎日十分な運動をさせる必要があります。
散歩は1日2回1時間程度行い、散歩だけでなくボール遊びや宝探しといった知的な遊びも取り入れていくと良いでしょう。
運動不足になるとストレスを溜めこんで問題行動を起こすことがあるので、毎日怠らずに運動させてください。
被毛のお手入れ
被毛のお手入れについては、短毛であるためあまり大変ではないでしょう。
ただ、ダブルコートなので抜け毛は多いです。
ブラッシングは週2~3回行い、換毛期にはもう少し頻繁に行うようにしましょう。
定期的なシャンプーも必要ですが、普段も汚れたら濡れタオルで拭いてあげるなど丁寧にケアしてあげてください。
ジャーマン・シェパード・ドッグがかかりやすい病気
最後に、ジャーマン・シェパード・ドッグがかかりやすい病気についても触れておきたいと思います。
ジャーマン・シェパード・ドッグは、戦時中に近親交配が行われたため遺伝性疾患が多いと言われています。
股関節形成不全
まず注意すべき病気としては股関節形成不全です。
股関節形成不全とは、太ももの骨と骨盤を結合させる股関節の形が異常である状態の病気です。
子犬の頃は目立った症状がなく、成長とともに異常が見られ病気に気づくことが多いです。
先天的な要因が7割を占める病気なので、ブリーダーから購入する際には親犬がこの病気にかかっていないかあらかじめ確認すると良いでしょう。
早ければ生後3~4ヶ月で発症してしまうこともあります。
悪化すると歩行困難な状態になってしまうため、少しでも歩き方に異常が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
また、先天的でなくても滑りやすい床で生活するなど環境が悪いと発症することがあります。
室内で犬を飼育する際には、滑り止めの床材を敷くなどくれぐれも注意しましょう。
膵液分泌不全
他にも、膵液分泌不全にかかりやすいと言われており、ジャーマン・シェパード・ドッグの場合は遺伝性のものが原因と考えられています。
膵液分泌不全とは、膵臓の外分泌機能が損なわれ、正常に食べ物の消化と栄養の吸収が出来なくなる病気です。
膵液分泌不全の症状には、
・白っぽい便をする、便の量が増える、食べているのに慢性的に痩せている、軟便をする
といった特徴があります。
上記の症状がみられたら、早めに動物病院を受診するようにしてください。。
肛門周囲瘻(肛門周囲腺炎)
肛門周囲瘻とは、分泌腺などの炎症が悪化して肛門周辺の皮膚に穴が開いてしまう病気です。
こちらも、ジャーマン・シェパード・ドッグの発症例が多く、遺伝的な原因があると言われています。
肛門周囲瘻の症状としては、
・便が出にくい、肛門を気にして舐めたり擦ったりする、腫れや赤み、痛み、肛門からの悪臭、肛門の周囲から膿や血がでる
といったものが見られます。
治療には抗生物質の投与や軟膏の塗布がありますが、重症化すると外科手術が必要となります。
日頃から愛犬の排便行動にも注意を払い、上記のような様子が見られた場合は動物病院を受診してください。
膿皮症
次に、全身性膿皮症という皮膚の病気があります。
ブドウ球菌などの細菌感染が原因と考えられていますが、発症については詳しいことは分かっていないようです。
膿皮症の症状としては、
・発疹、発赤や脱毛、膿を含んだ水ぶくれ、かさぶた、腫れや痛み、発熱
といったものが挙げられます。
また、ジャーマン・シェパード・ドッグの場合全身に広がることが多いため、悪化すると治療が困難を極めるようです。
胃捻転
そして、大型犬であるため胃捻転にも注意する必要があります。
胃捻転は大型犬によく見られる、死の危険性まである病気です。
食後しばらくしたら、
・お腹が膨れてきた、何度も吐こうとする、落ち着きがない、大量によだれを垂らす、腹痛
といった症状がみられた場合は、一刻も早く動物病院へ行きましょう。
命にかかわる病気であるため、
・食後は安静にする、食事は数回に分けドカ食いは防ぐ、首が水平に近い状態で食べられるようにエサ台を調整する
など、日頃から食事管理には配慮していきましょう。
まとめ
ジャーマン・シェパード・ドッグはドイツ原産の大型犬で、体高60cm体重30kgほどの大きさになります。
知的で冷静、忠誠心が強い犬種ではありますが、幼犬のしつけを怠ってしまうと言うことを聞かない攻撃的な犬となってしまうことがあるようです。
見た目の恐さと警察犬というイメージから、家庭犬として飼いたいという方はそんなに多くはないかもしれません。
実際、ジャパンケンネルクラブでの登録数も、2017年で318頭とまあまあの数です。
最初のしつけが肝心ということも考えると、やっぱりある程度上級者向けの犬種なのかもしれませんね。
ただ、彼らを家族として迎え入れたら、深い愛情をもって家族を守ってくれることでしょう。
犬の飼育に慣れてきたら、是非一度検討してみてはいかがでしょうか。